管理職になったばかりの頃、私は部下のメールをほぼすべて確認していました。
お客様にどんなメールを送っているのか。
認識に間違いはないか。
トラブルになりそうな内容はないか。
管理職なのだから、部下の仕事をきちんと把握しておかなければならない。
そんな気持ちがあったからです。
でも、仕事が増えてくると、物理的にすべてを見ることが難しくなりました。
部下のメールを確認する。
会議に出る。
自分の仕事をする。
管理職としての仕事もする。
すべてを同じように頑張ろうとすると、いくら時間があっても足りません。
そこで私は、考え方を変えました。
全部を見るのではなく、自分が見るべきものを決める。
仕事そのものを減らすのではなく、力を入れる場所を決めるようにしたのです。
その結果、大きな数字につながる仕事や、本来やるべき管理業務にも時間を使いやすくなりました。
今ではAIも使いながら、確認すべきものを整理しています。
今回は、部下のメールを全部確認していた私が、なぜ「全部頑張る」のをやめたのかを書いてみます。
管理職になって、部下のメールを全部確認していた
管理職になった当初、私は部下のメールをできるだけ確認するようにしていました。
法人営業なので、お客様とのメールは仕事を進めるうえで重要です。
部下がどのような話をしているのか。
案件はどこまで進んでいるのか。
お客様との認識にズレはないか。
管理職として、把握しておいた方がいいと思っていました。
メールを見ていれば、何か問題がありそうなときにも気づけます。
「自分が確認しておけば、トラブルを防げるかもしれない」
という気持ちもありました。
だから、とにかく見る。
部下から来るメールも、お客様とのやり取りも確認する。
当時はそれが、管理職として仕事を頑張ることの一つだと思っていました。
でも、物理的に全部を見ることができなくなった
当然ですが、メールを確認するには時間がかかります。
仕事が増え、見るべき範囲も広くなってくると、だんだん追いつかなくなりました。
メールを確認している間にも、自分の仕事は増えていきます。
管理職としてやらなければならないこともあります。
そこで初めて、
「全部を見るのは物理的に無理だ」
と思うようになりました。
ここで、さらに頑張ってすべてを見ようとすることもできたかもしれません。
でも、それでは自分の仕事をする時間がなくなります。
そこで私は、「全部を見る」ことを諦めました。
代わりに考えたのが、
何を見るのかを取捨選択すること
です。
振り返ってみると、これが「全部頑張る」という働き方を見直すきっかけになりました。
「全部見る」から「見るべきものを決める」に変えた
部下のメールをすべて確認するのをやめたからといって、何も見なくなったわけではありません。
むしろ、
「どこを重点的に見るのか」
を考えるようになりました。
私が特に意識して確認するようにしたのが、経験の浅い部下のやり取りです。
経験を積んだ部下と、まだ経験の浅い部下では、同じように任せる必要はないと考えました。
経験のある部下が問題なく進めている仕事まで、私が細かく確認する必要はない。
一方で、経験の浅い部下については、必要に応じてメールを確認する。
もう一つ、重点的に見るようにしたのが、クレームやトラブルに発展しそうなやり取りです。
問題が起きてからすべてを確認するのではなく、
「少し危ないかもしれない」
というものには早めに目を通す。
全部に同じ時間を使うのではなく、自分が関わる意味が大きいところに時間を使うようになりました。
仕事の取捨選択は「手を抜くこと」ではなかった
以前の私は、仕事を取捨選択することに対して、
「やるべき仕事を減らしているだけではないか」
という感覚も少し持っていました。
でも、実際にやってみると考え方が変わりました。
仕事の取捨選択は、単純に仕事量を減らすことではありません。
重要度の低いところに使っていた時間を、重要度の高いところへ移すことです。
部下のメールをすべて確認しなくなったことで、私は別の仕事に時間を使えるようになりました。
一つは、管理職としての管理業務です。
そしてもう一つが、大きな数字につながる仕事でした。
空いた時間を「大型案件をどう攻略するか」に使うようになった
法人営業として仕事をしていると、すべての案件が同じ規模ではありません。
比較的小さな案件もあれば、大きな数字につながる大型案件もあります。
以前は部下のメールを一つひとつ確認することにも多くの時間を使っていました。
でも、すべてを確認するのをやめたことで、大型案件について考える時間を作れるようになりました。
私が時間を使うようになったのが、大型案件をどう攻略するかを整理することです。
目の前に来たメールを次々と確認していると、「仕事をしている」という感覚はあります。
でも、大型案件を進めるためには、メールを処理するだけでは足りません。
一度立ち止まって、
「この案件をどう進めるのか」
を考える時間が必要です。
大型案件ではBANTCを整理する
大型案件について考えるとき、私が整理するものの一つがBANTCです。
BANTCは、案件を整理するための考え方として使っています。
予算はどうなっているのか。
決裁に関わる人は誰なのか。
お客様は何を求めているのか。
いつまでに導入したいのか。
競合はどこなのか。
こうした情報を整理しながら、
「この案件を前に進めるために、次に何をしなければならないのか」
を考えます。
情報が足りなければ、何を確認する必要があるのか。
社内で動かなければならないことがあるなら、誰に相談するのか。
大型案件だからこそ、目の前の作業だけでなく、案件全体を見るための時間を取るようになりました。
※BANTCの定義や運用方法は、会社や組織によって異なる場合があります。ここでは私が案件を整理するときに使っている考え方として書いています。
イレギュラーな社内調整ほど、早めに根回しする
大型案件では、通常の進め方だけでは対応できないこともあります。
イレギュラーな社内調整が必要になるケースです。
そうしたとき、問題が目の前に来てから、
「この対応をお願いしたいです」
と相談しても、すぐには動けないことがあります。
だから私は、イレギュラーな調整が必要になりそうだと感じたら、早めに社内で根回しするようにしています。
「この案件では、今後こういう相談をするかもしれない」
と事前に話をしておく。
実際に調整が必要になったとき、少しでも動きやすくするためです。
こうした仕事は、メールを何通処理したかのように、やったことが分かりやすい仕事ではありません。
でも、法人営業として大きな数字を作るためには、私はこういう仕事に時間を使う方が重要だと考えるようになりました。
全部確認しなくなると、やっぱり不安だった
とはいえ、
「今日から部下のメールは全部見ません」
と割り切れたわけではありません。
不安はありました。
「自分が見ていないメールの中に、重要なものがあるのではないか」
と思うからです。
トラブルにつながるメールを見落としていたらどうするのか。
自分が知らないところで問題が大きくなっていたらどうするのか。
それまで全部を確認していたからこそ、「見ない」ということ自体に不安がありました。
だから今は、その不安を別の方法で補うようにしています。
今はAIにもフラットに取捨選択してもらう
現在は、AIも使っています。
自分だけで、
「これは重要」
「これは見なくても大丈夫」
と判断するのではなく、AIにもフラットな視点で確認すべきものを整理してもらい、一覧で見るようにしています。
私自身は、経験の浅い部下のやり取りや、クレーム・トラブルに発展しそうなものを重点的に見ます。
そこにAIによる整理も加えることで、
「自分の判断だけでは拾えていないものがないか」
を確認しています。
もちろん、AIにすべての判断を任せているわけではありません。
AIが重要だと判断したから、そのまま対応するわけでもありません。
最終的に何を見るのか。
どこまで自分が関わるのか。
どう対応するのか。
そこは管理職である自分が判断します。
私にとってAIは、判断そのものを任せる相手というより、「もう一つの目」として使うものに近いです。
全部を自分の目で確認するのではなく、重要なものを見落としにくくする仕組みを作る。
今は、そんな仕事のやり方に変わっています。
「全部頑張る」と「成果を出すために頑張る」は違う
部下のメールを全部確認していた頃の自分が、仕事をサボっていたわけではありません。
むしろ逆です。
全部を見ようとして、一生懸命仕事をしていました。
でも、管理職になって仕事の範囲が広がったことで、そのやり方には限界が来ました。
そこで、
「全部頑張る」と「成果を出すために頑張る」は違う
と考えるようになりました。
部下のメールを全部見る。
会議に全部出る。
来た仕事を全部同じようにやる。
それを続けていると、本当に自分が時間を使わなければならない仕事に使える時間がなくなります。
私の場合は、
経験の浅い部下をフォローする。
トラブルになりそうな案件を見る。
管理職として必要な仕事をする。
大型案件のBANTCを整理する。
必要になりそうな社内調整を早めに進める。
こうしたところに時間を使うようになりました。
何かに力を入れるためには、何かに力を入れないと決める必要があります。
管理職になってすべてを追えなくなったことで、私はようやくそのことに気づきました。
忙しいときほど「何をやるか」より「何に力を入れるか」を考える
仕事が増えると、
「どうすれば全部終わらせられるか」
を考えたくなります。
私もそうでした。
でも、仕事量が一定の範囲を超えると、全部を同じレベルでやること自体が難しくなります。
そうなったとき必要なのは、さらに頑張ることではなく、
「自分が力を入れるべき仕事はどれか」
を考えることなのだと思います。
全部の仕事を雑にするという意味ではありません。
自分が細かく関わらなくても進む仕事は任せる。
一方、自分が関わることで結果が大きく変わる仕事には時間を使う。
私の場合、それが管理職としての仕事の仕方を変えるきっかけになりました。
まとめ|全部を頑張れなくなって、初めて大切な仕事が見えた
管理職になった当初、私は部下のメールをほぼすべて確認していました。
管理職なのだから、部下の仕事をきちんと見なければならない。
そう思っていたからです。
でも、仕事が増えて、物理的に全部を見ることができなくなりました。
そこで、
「全部を見る」から「見るべきものを決める」
へ考え方を変えました。
経験の浅い部下は見る。
クレームやトラブルにつながりそうなものは見る。
一方で、経験のある部下に任せられる仕事は任せる。
そこで生まれた時間を、管理業務や大型案件に使う。
大型案件ではBANTCを整理し、必要になりそうな社内調整は早めに根回しする。
それでも見落としへの不安はあるので、今はAIにもフラットに情報を整理してもらい、一覧で確認しています。
仕事を取捨選択することは、仕事を頑張らないことではありません。
むしろ、
限られた時間を、成果への影響が大きい仕事に使うための選択
だと今は考えています。
全部を頑張ろうとしていた頃より、全部を頑張れないと認めてからの方が、「自分はどの仕事に時間を使うべきなのか」を考えるようになりました。
管理職になって仕事が増えたことは大変でした。
でも、その経験があったからこそ、
仕事は全部に100%の力を使うのではなく、力を入れる場所を自分で決める。
今は、それを意識して仕事をしています。
