「この人なら、細かく確認しなくても任せられる」
と感じる人がいます。
最初は、知識が豊富だったり、仕事が速かったりする人が「仕事ができる人」なのだと思っていました。
もちろん、それらも大切です。
ただ、実際に管理職として仕事を任せる立場になってみると、それだけではありませんでした。
特にトラブル対応や大きな案件など、簡単には答えが出ない仕事を任せたときに差が出ます。
私が「仕事を任せやすい」と感じる人には、共通する仕事の進め方がありました。
それが、次の4つです。
- 複雑な仕事を「今できること」に分解する
- 社内ルールを暗記するのではなく「仕事の進め方」を知っている
- タスクではなく「目標と現在地」から仕事を考える
- 将棋のように「2手以上先」を考えて発言する
今回は、管理職として部下を見てきた中で感じた、この4つについて書いてみます。
複雑な仕事を「今できること」に分解する
トラブル対応や大きな案件では、調整事項が一気に増えます。
顧客への確認が必要。
社内の関係部署にも相談しなければならない。
上司の判断も必要。
別の担当者から回答をもらわないと進められないこともある。
こうした仕事では、いろいろな問題が絡み合っているため、全体を見ているだけでは何から手をつければいいのか分からなくなることがあります。
そんな場面で、私が「この人には任せられる」と感じるのは、複雑な仕事を一つずつ分解できる人です。
すべてを一度に解決しようとするのではなく、
「今の時点でできることは何か」
「今、自分が持っているボールは何か」
を整理します。
そして、自分が持っているボールを社内外の相手に返し切る。
相手からの回答待ちになったら、その間に別の調整を進める。
このように、一つずつ仕事を動かしていきます。
私はこれが、複雑な仕事を進めるうえで非常に大切だと感じています。
難しい仕事だからといって、最初からすべての答えを持っている必要はありません。
むしろ大切なのは、
「今、自分が動かせるものは何か」
を見つけることです。
そして、自分のところでボールを止めない。
トラブルや大きな案件でも、こうして仕事を前に進められる人には、徐々に大きな仕事も任せやすくなります。
社内ルールを全部覚えるのではなく「仕事の進め方」を知っている
仕事を任せやすい人を見ていると、社内のルールにも強いと感じます。
ただし、すべてのルールを暗記しているわけではありません。
むしろ私が重要だと思うのは、
「分からないときに、どうすれば仕事を進められるかを知っていること」
です。
会社には、さまざまなルールがあります。
申請方法、承認ルート、契約、経理処理など、すべてを記憶しておくのは難しいと思います。
それでも仕事を止めない人は、
「この内容なら、あの社内マニュアルを確認すればいい」
と分かっています。
そして、行動するためには何が必要なのかも理解しています。
さらに、
「この案件なら、正式に進める前にこの人へ話をしておいた方がいい」
と、誰に根回しすべきかも分かっています。
つまり、単に社内ルールに詳しいのではありません。
会社の中で、どうすれば仕事を前に進められるのかを知っている。
ここが大きな違いだと思っています。
分からないことが出てくるたびに上司へ、
「これはどうすればいいですか?」
と聞かなければ進められない人と、
「分からないから、まずマニュアルを確認しよう」
「次にこの人へ相談しよう」
と自分で動ける人では、仕事の進み方が変わります。
管理職として見ていると、知識量そのものよりも、分からない状態から自分で仕事を動かせることの方が重要だと感じています。
タスクではなく「目標と現在地」から仕事を考える
仕事をたくさんこなしている人が、必ずしも成果を出すとは限りません。
これは管理職になって、より強く感じるようになりました。
メールを返す。
資料を作る。
会議に参加する。
顧客を訪問する。
どれも仕事として必要です。
ただ、目の前にあるタスクを一つずつこなしているだけで、組織の目標が達成されるわけではありません。
私が仕事を任せやすいと感じる人は、組織が何を目標としているのかを理解しています。
そして、目標だけを見るのでもありません。
「目標に対して、今の現在地はどこなのか」
を考えています。
たとえば、目標と現在地に差がある。
そうしたら、
「この差を埋めるために、何をすればいいのか」
と打ち手を考えます。
そして、その打ち手を実行するために必要な仕事をする。
順番としては、
目標 → 現在地 → 差分 → 打ち手 → 行動
です。
目の前にタスクがあるから仕事をするのではありません。
目標を達成するために必要だから、その仕事をする。
この違いは大きいと感じています。
組織目標と自分の行動がつながっている人は、「次に何をすればいいですか」と指示を待つのではなく、自分で必要な打ち手を考えられます。
結果として、数字目標の達成にもつながりやすくなります。
管理職として仕事を任せる立場になると、タスクをこなせる人より、目標から必要なタスクを考えられる人の方が任せやすいと感じています。
将棋のように「2手以上先」を考えて発言する
もう一つ、私が仕事を任せやすいと感じる人に共通しているのが、
目の前のことだけを考えて発言していないこと
です。
私はこれを、将棋のように「2手以上先を読む」と考えています。
たとえば、顧客や社内の関係者に何かを伝えるとします。
そのとき、
「自分はこれを伝えたい」
だけで発言するのではありません。
「これを言ったら、相手はどう返してくるだろう」
と考える。
さらに、
「こう返ってきたら、次はどうするか」
まで考えてから発言します。
だから、一言一言に意図があります。
特に顧客との商談や難しい社内調整では、この差が大きいと感じます。
相手の反応を考えずに発言すると、意図していなかった方向へ話が進んでしまったり、新たな調整事項が発生したりすることがあります。
一方で、2手先を考えている人は、
「この言い方をしたら、こういう質問が来そうだ」
「その質問が来たら、この情報が必要になる」
と、次の展開を想像しています。
将棋でも、自分の駒だけを見て指すわけではありません。
自分が一手指したら、相手がどう指すのかを考える。
仕事のコミュニケーションにも、似たところがあると思っています。
話してから考えるのではなく、相手の反応まで考えてから話す。
こういう人には、顧客とのやり取りや難しい社内調整も任せやすくなります。
4つに共通しているのは「仕事を止めないこと」
ここまで4つ挙げましたが、改めて考えてみると、共通していることがあります。
それは、
自分で仕事を前に進められること
です。
複雑な仕事なら、今できることに分解する。
分からないことがあれば、社内マニュアルの場所を調べたり、必要な人へ相談したりする。
目の前のタスクだけではなく、組織目標と現在地から次の打ち手を考える。
そして誰かと話すときには、その人の次の反応まで考える。
どれも、「上司から次の指示が来るまで待つ」という仕事の仕方ではありません。
自分で考えて、次の一手を作っています。
私が管理職として「この人には仕事を任せられる」と感じる理由は、ここにあるのだと思います。
任せられる人が増えると、管理職の「管理する仕事」が減った
こうした人に仕事を任せるようになって、私自身の仕事にも変化がありました。
一番大きかったのは、
細かく確認しなくてよくなったことです。
「この案件はどうなっている?」
「次は何をする?」
「この件は誰に確認した?」
と、一つひとつ確認する必要がありません。
本人が仕事を前に進めているからです。
その結果、報連相のあり方も変わりました。
もちろん、重要な判断やリスクについての報連相は必要です。
私が不要だと感じるようになったのは、管理職が状況を把握するためだけに行う細かな報連相です。
以前の私は、部下のメールをすべて確認していた時期もありました。
しかし、管理職がすべてを確認し続けるのには限界があります。
部下自身が仕事を前に進められるようになれば、
「今どうなっている?」
と管理職が何度も確認する必要はなくなります。
管理職側も、細かな確認ではなく、自分が本来力を使うべき仕事に時間を使えるようになります。
これは、私自身が管理職になって強く感じたことの一つです。
「仕事を任せやすい人」は、何でも一人でできる人ではない
ここで誤解したくないのは、仕事を任せやすい人とは、何でも一人で解決できる人ではないということです。
大きな仕事になればなるほど、一人では解決できません。
社内の関係部署に相談することもあれば、上司の判断が必要になることもあります。
顧客に確認しなければ分からないこともあります。
大切なのは、一人で抱え込むことではありません。
むしろ、
「これは自分で判断できる」
「これはマニュアルを確認すれば分かる」
「これはこの人に相談する必要がある」
「これは上司に判断してもらう必要がある」
と切り分けられることです。
そして、必要なタイミングで周囲を巻き込みながら仕事を前に進める。
私が管理職として安心して仕事を任せられるのは、そういう人です。
まとめ|管理職になって「任せられる人」の見え方が変わった
管理職になる前は、知識が豊富だったり、仕事のスピードが速かったりする人を見ると、「仕事ができる人だな」と思っていました。
もちろん、今でもそれらは大切だと思っています。
ただ、実際に管理職として仕事を任せる側になってみると、別の部分を見るようになりました。
複雑な仕事を分解し、自分のボールを返し切れる。
分からないことがあっても、調べ方や相談先を知っている。
組織目標と現在地を理解し、必要な打ち手を自分で考える。
そして、相手の反応を想像しながら2手以上先を考えて発言する。
こうした人には、細かく仕事の状況を確認しなくても、大きな仕事を任せやすくなります。
4つに共通しているのは、
「自分で仕事を前に進められること」
だと思います。
管理職がすべてを確認し、すべてを指示しなければ動かない組織には限界があります。
だからこそ私は、部下に仕事を任せるとき、
「この人は、自分で次の一手を考えられるか」
を見るようになりました。
仕事を任せられる人とは、何でも一人でできる人ではありません。
目標を理解し、自分で考え、必要な人を巻き込みながら、仕事を止めずに前へ進められる人。
管理職として部下を見てきた中で、私はそう感じています。
